Alembicとは
Alembic(アレンビック)は所謂ハイエンドのギター・ベースメーカーとして有名なブランドです。
モデルによって違いはありますが、スルーネック構造による豊かなサスティンや、ローノイズの電気系統などを特徴としています。
後述の通り、ロックシーンにおいて誕生した楽器ですが、現在ではジャズ・フュージョン界隈の使用者も増えており、その音響特性の評価の高さが窺えます。
現在でこそFoderaやKen Smith等のハイエンドブランドもありますが、Alembicはその先駆け的存在となっており、後のギターメーカーに対しても多大な影響を与えています。
また、Alembicとは錬金術において化学物質を蒸留するために使用された蒸留器の名称が由来となっており、研究開発姿勢の根本を表現しています。
歴史
レコーディング、PA等でミュージシャンのバックアップを担当していたロン・ウィッカーシャム(Ron Wickersham)がローノイズで音響特性の優れた楽器の必要性を感じ、楽器製作に乗り出したのがブランドとしての始まりです。
当時ウィッカーシャムはロックバンド、グレイトフル・デッド(Grateful Dead)のエンジニアとして活動していました。
グレイトフル・デッドはライブ主体のバンドであり、ライブレコーディングやPAが非常に重要だったものの、その当時は彼らが納得できる音響システムが確立されていませんでした。
音質改善に専念する中で様々なシステムを開発し、その過程で得たノウハウを活かして製作されたのが"音響特性の優れた楽器"Alembicです。
特徴
前述の通りですが、PAやレコーディングに携わる過程で得たノウハウを基にした、音響特性の優れた楽器作りが特徴的です。
ローインピーダンスピックアップやハムキャンセラー、フィルタートーンコントロールという電子技術面の研究成果によるローノイズを実現。
スルーネックや多層ラミネート、そして当時のエレキギター/ベースとは異なる装飾など、後のハイエンド楽器にも見られる特徴を盛り込んでおり、まさにハイエンド界の先駆者といったところ。
スルーネック構造は抜群のサスティンを生み、更にネックジョイントの段差がないことによるハイポジションでのプレイアビリティの高さを実現しました。
その設計通り雑音のない抜けるサウンドで、テクニカルなプレイヤーに愛用される理由がよく分かります。
またベースのゴーストノートの存在感もAlembicならではで、後のベースメーカーに大きな影響を与えたことは想像に難くありません。
主な使用ミュージシャンと使用モデル
Stanley Clarke(スタンリー・クラーク)

ジャズ・フュージョン系ピアニストのChick Corea(チック・コリア)らと結成したReturn To Forever(リターン・トゥ・フォーエヴァー)で若くして一躍有名になったスーパーベーシスト。
ウッドベースの名手ですが、エレキベースにおいてもラスゲアード等を用いたスパニッシュ色が強い独特な演奏で強烈な個性を放つジャズベーシスト界のヒーロー。
「Stanley ClarkeといえばAlembic」というほどエレキベースはAlembic製のものを一環して愛用しており、ハイエンドベースの火付け役とも言える存在です。
使用機材は自身のシグネチャーモデルであるStanley Clarke Signature
Jimmy Johnson(ジミー・ジョンソン)

渡辺貞夫、Lee Ritenour(リー・リトナー)、Allan Holdsworth(アラン・ホールズワース)といったジャズ・フュージョン系アーティストのバックでの活躍が有名です。
また、近年はSteve Gadd(スティーヴ・ガッド)のリーダーグループでレギュラーベーシストとして活動しており、更にそのメンバーでJames Taylor(ジェームス・テイラー)のバックバンドを担当しています。
非常に渋いプレイングで、派手なテクニックに頼らずに美しいベースラインを聴かせる職人肌のベーシスト。
細かくゴーストノートを混ぜ込んだグルーヴィなベースラインはベーシスト必聴です。
使用機材は5弦ベースでその名もAlembic 5 Strings
Mark King(マーク・キング)

英国のファンク・フュージョン・バンド、Level 42(レベルフォーティトゥー)のリーダーで知られる、ベーシスト兼ヴォーカリスト。
16分音符中心の高速スラップでベースラインをパーカッシヴに弾きながら歌うというスタイルで、ファンクベースの発展に多大な貢献をしたベースヒーローです。
Alembic製ベースは自身のシグネチャーモデルのAlembic Mark King Modelを使用。
渡辺 香津美(わたなべ かずみ)

日本で一番のギタリストとの呼び声も高い技巧派ジャズ・フュージョン系ギタリスト。
世界的な著名ミュージシャンとの共演も多く、あのMiles Davis(マイルス・デイヴィス)とも共演しています。
若い頃にAlembic SSGを使用。
Jason Newsted(ジェイソン・ニューステッド)

Metallica(メタリカ)やOzzy Osbourne(オジー・オズボーン)のバンドへの参加で知られるヘヴィメタルのベーシスト。
刻むようなベースラインの他、ヴォーカル・コーラス面でも高い評価を誇る。
ジャズ・フュージョン界で親しまれたブランドの楽器がヘヴィメタルでも通用することを証明した人物。
ElanやEuropaといったモデルの他、自身のシグネチャーモデルであるAlembic JNL SB-4を使用。